ペースメーカによる徐脈治療は年間約6万件に上っており、植込み型除細動器(ICD)治療もすでに保険適用されてから17年有余経過しており適用患者数も年々急速な伸び率で増加しております。これらの機器の技術革新は目覚しく、欧米では新しい機能を追加した新製品が半年から1年毎に導入されているのが現状であります。また、ペースメーカを心不全治療に応用した心臓再同期療法(CRT)も開発され市場に導入されて約10年経っており、それにICD機能を有するCRT-Dも急速に普及しております。さらに、IT技術による患者の遠隔モニタリング機能を搭載したデバイスがスタンダード製品になるなど植込みデバイス市場の技術革新は飛躍的に大きく進展しております。
それらの急速に高度化する植込みデバイスの機能とそのアルゴリズムを理解し、一人ひとりの患者の容態に対応したプログラム設定によって最適な治療を行うことは、医師や病院に勤務する検査技師や臨床工学技士の知識と経験では限界となっているのが実態であります。従って、日本のみならず欧米においても植込みデバイスの植込み手術や植込み後の動作確認のためのフォローアップには、医師のサポートとして多岐にわたる治療・診断機能に精通し適切なプログラミング操作ができる専門家が必要とされてきたわけです。従来、この役割はこれらの治療機器の製造販売業者やその販売代理店の担当者が担ってきたわけですが、当該役割を担う専門家を養成しそれを認定する制度の必要性が行政側からも叫ばれ、2003年度に公表された厚生労働省の「医療機器産業ビジョン」においては、「医療機器版MR(医療情報担当者)制度」が提唱されるに至りました。
その後、幾つかの紆余曲折を経て、2007年度には「医療機器版MR(医療情報担当者)制度」の正式名称を『CDR(Cardiac Device Representatives)認定制度』として日本不整脈心電学会が認定機関となることが決定されました。このCDR認定制度の中心をなす認定試験は、米国のIBHRE(International Board of Heart Rhythm Examiners)検定試験が活用され、他にCDR認定の条件として日本不整脈心電学会主催の『ペースメーカ技士養成セミナー』若しくは日本臨床工学技士会主催の『不整脈治療関連指定講習会』と業界団体が主催する『業界指定講習』の研修が義務付けられる制度となりました。その『業界指定講習』を主催する機関として発足したのが、日本不整脈デバイス工業会の外郭団体としての日本CDRセンター(JCC)であります。
日本CDRセンターは2007年度に発足し、植込みデバイスに関わる情報提供担当者の質的向上を目的としたCDR(Cardiac Device Representatives)認定制度の確立及び制度運営維持の支援機関として位置づけられ、当該情報提供担当者が医療機関及び医療従事者に対してペースメーカ等の適正使用と医療安全の確保に関わる質の高い情報を提供できるように業界企業におけるCDR 認定取得志望者を対象に所定の研修である講習会を主催しその運営と管理に携わる活動を続けております。