『CDR』の役割
2003 年に厚生労働省は、医療機器の安全の確保という観点から公表した「医療機器産業ビジョン」の中で、「医療機器の安全使用確保のための情報提供の質の向上に資する民間認定」として“医療機器版MR (医療情報担当者)制度”の必要性を提唱した。こうした行政の声に応えるために2008 年にCDR認定制度が制定された。
CDR とは、植込み型心臓ペースメーカや植込み型除細動器(ICD )等についての専門的な医療機器情報や医療技術情報を提供するものを指す。CDR 認定制度は、植込み型医療機器の適正かつ安全な使用のために、専門的な技術と知識を有し、かつ医療関連企業あるいは医療機関の従事者として高い倫理観を備えた専門家の育成を目指す制度である。CDR の認定を受けるには、所定の講習会やセミナーを受講し、米国不整脈学会関連団体が実施している国際的な試験であるIBHRE(International Boardof Heart Rhythm Examiner )検定試験に合格することが要件で、さらにいくつかの必要条件を満たしているものを日本不整脈心電学会が認定している。
今後、植込み型心臓ペースメーカや植込み型除細動器(ICD)等の最先端医療機器に携わる医療関連企業の従事者は、その安全使用確保のための情報提供者として、CDRの認定取得が必要と考える。
日本不整脈心電学会は、あらためて臨床現場における CDRの果たすべき役割等につき以下の指針を示す。
1 臨床現場におけるCDRは、医師の管理・指導の下、自社が製造あるいは販売するペースメーカやICD等の植込み手術時のプログラマーやPSA(Pacing System Analyzer)等の機器操作やトラブルシューティングのサポート、フォローアップを行うものとする。CDRは清潔野に立ち入ることは出来ない。
また、CDRは技術専門知識の提供や機器の操作を含む技術サポートを適正にかつ即時的にできる資質を備えている必要がある。
2 CDRは、医師により管理・指導が行われる臨床現場(即ち、心臓カテーテル検査室内や手術室、外来、検査室等)、あるいはモニターが行われている病室において、医師の管理・指導下で情報提供や技術サポートを行う。
3 CDRは、医師の管理・指導の下で、患者対応を行っている臨床工学技士、看護師、臨床検査技師等の医療スタッフに対しても、技術サポートや技術情報の提供を行う。
4 CDRは専門知識をもってペースメーカやICD等に関する質問に答えるが、遠隔モニタリングに患者を登録したり、患者の情報を収集したりするような医療施設で行われる通常業務については行ってはならない。
5 CDRは、医師の管理・指導が無い場合には、臨床現場における技術サポートを行ってはならない。
6 CDRは、医師の同伴とその管理・指導が無い場合には、患者の自宅において技術サポートを行ってはならない。
7 CDRが行う医療機器情報の提供、機器の使用、操作等の業務は、自社が製造あるいは販売する製品に限定する。ただし、患者が緊急措置を必要とする場合で、かつ医師からの指示・要請があった場合には、他社の製品に関しても知り得る限りの有用な医療機器情報や技術サポートを提供する。
8 CDRによる医療機器情報の提供、機器の使用、操作等の業務の目的は、使用される医療機器の適正使用の推進、および患者安全の確保の為である。よって、CDRは患者の容態変化に対応するために緊急対応の体制を構築・維持し、医師の緊急対応要請に応えられるよう最善を尽くす。
9 CDRは医療施設内で業務を行なう場合、医療施設における院内規定・方針に従わなければならない。
10 上記1−10 の指針で定めた役割は、学会のガイドライン、各種法規、行政指導を遵守して行う。